高齢者の加齢による変化と特徴①
日本は現在世界で第1位の超高齢社会大国です。
超高齢社会とは、65歳以上の人口の割合が全人口の
21%を占めている社会を指します。
つまり、約5人に1人が65歳以上という事です。
日本は、1970年に「高齢化社会」に突入しました。その後も高齢化率は急激に上昇し、1994年に高齢社会、2007年に超高齢社会へと突入しました。今後も高齢者率は高くなると予測されており、2025年には約30%、2060年には約40%に達すると見られています。
引用元: 健康長寿ネット
今回は、現状を踏まえて、
そもそも高齢者とは他の世代の層とは何が変化していくのか?
その特徴と起こりやすい病気についてまとめていきたいと思います。
今回の記事の目的について
高齢化により変わっていく身体機能・生理的機能の変化と特徴について解説します
身体機能の変化と特徴
①身長
40歳代で減少し始め、変化が大きいのは60~70歳代です。
骨のカルシウム量が減り骨量が軽石のように軽く脆くなり、骨折しやすくなります。
骨がもろくなって骨折しやすい病気を「骨粗鬆症」と言います。
この状態は自覚症状はなく、気がつかないうちに病気が進行していきます。
骨が極端にもろくなると、骨折しやすくなります。
女性は男性に比べて閉経期を迎えると女性ホルモン「エストロゲン」の分泌が急激に減少します。
このホルモンは骨の吸収を抑制する作用があるのでこれが欠乏すると骨粗鬆症の状態になります。
現在の骨粗鬆症の判定基準によれば、50歳以上の女性の約24%がこの病気になると言われています。
加齢による身長が縮む原因の一つとしては、「生活習慣による不良姿勢」だけでなく「骨粗鬆症による背骨の圧迫骨折・背骨の変形」が影響してきます。
②体重
中年で増加し、高齢者で減少します。
これは、筋肉・水分・骨の減少によるものです。
年を取ると、人は普通にしていてもゆっくりと体重が減るものなので急激な減少でなければ問題ありません。
病的な体重減少としては、食事制限や過度の運動をしているわけではないのに「6か月で5%以上」の体重減少を認める場合をいうことが多いと言われています。
その場合には栄養減少している要因を把握して対処する必要があります。
③体型
腕、脚は細くなるが、胴は太くなります。
日常的に運動していない人の場合、加齢とともに筋肉量が落ちていきます。
そして、80代になると筋肉量は20代の60%にまで減ってしまうと言われています。
また、脂肪は若年者に比べて2倍に増加しています。
つまり加齢と共に、筋肉量は減りやすく脂肪は蓄積されやすくなるのです。
上記の表をみると、70歳以降下降率が急激に進行しています。
全体的に下降していますが、その中でも体幹に比べて四肢特に下肢の減少が最もみられています。
④姿勢
姿勢としては、背中が曲がり上体が前かがみになります。
又、 腰や背中の筋肉が弱り、椎骨の変形、椎間板の変性が起こります。
筋肉量の減少と骨密度の低下が、骨の変性を促進させます。
男女差では、表によると女性の方が骨密度減少の割合が高く骨折しやすいといえます。
⑤関節
関節は、関節周囲の組織が弾力を失い、可動域が狭くなります。
また、関節の表面の軟骨が固くなりすり減ってきて、変性を起こしやすくなります。
そうなった場合には、「変形性関節症」と呼ばれます。
この病気の最も多い原因は加齢ですが、そのほかにも女性に多く、体重が重い人、スポーツや仕事で関節をよく使っていた人などに多いと言われています。
その中でも膝関節が一番症状を引き起こしやすい部位となります。
吉村らの運動器疾患のコホート研究で得られた推計では、わが国の変形性膝関節症の有病率は40歳以上の男性で42.0%、女性で61.5%であり、患者数は2530万人(男性860万人、女性1670万人)とされている1)。
⑥目
視力は45歳を境に急速に低下し、75歳を過ぎると更に低下します。
視野の低下も一般的であり、その体積や面積において20歳代の60~80%です。
高齢期に多い目の病気として「白内障」「緑内障」「加齢黄斑変性症」と言われています。
目は片目に異常が起こっても、もう片方の目で見えてしまうために変化に気が付きにくいと言われています。
⑦耳
65歳以上になると、何らかの聴力障害が出てくると言われています。
その中で高齢になると感じる聞こえずらさは「加齢性難聴」と言われています。
特に、高い音が聞きにくくなるようです。
難聴は「認知症の最も大きな危険因子」と言われており、認知症を予防するためにはそれに対する対処が大切です。
【身体機能の変化と特徴のまとめ】
①〜⑦まで身体機能の変化と特徴について見ていただきました。
加齢と共に全般的に変化が現れてくることが理解できたのではないでしょうか。
【平均寿命と健康寿命】
引用元:厚生労働省.e-ヘルスネット.平均寿命と健康寿命
平均寿命とは「0歳における平均余命」のことで、2016年の平均寿命は男性80.98歳、女性87.14歳です[1]。一方、健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをいい、2016年の健康寿命は男性72.14歳、女性74.79歳となっています[2]。
と言われているように、平均寿命と健康寿命との差は男性が約8年、女性が13年と言われています。
この日常生活に制限のある期間をいかに減らしていくかが大切になってくると思われます。
そのためには、
定期的な健康診断でご自身の体の状態の定期点検をしたり、
定期的な運動、ご自宅や地域での役割や趣味の継続、他者との交流などを行うことが
予防につながる行動となると思われます。
生理的機能の変化と特徴
①脳
加齢により脳で起こる大きな変化としては、脳の萎縮があります。
【脳の加齢による変化について】
引用元:健康長寿ネット.高齢者の神経系の変化
人の脳は、子供の頃から徐々に大きくなり、重さも重くなりますが、20歳頃に重さがピークとなります。その後は大きさや重さを維持していますが、50歳頃を境として、徐々に脳の萎縮が始まり、重さも減少していきます。脳の中でも、大脳の萎縮がもっとも強く、次いで小脳、脳幹の順で萎縮が進んでいきます。大脳の中では、前頭葉、側頭葉の萎縮が大きく、頭頂葉や後頭葉は萎縮が少ないとされています。
脳には萎縮の他にも、神経細胞の萎縮や消失がみられたり、いわゆる「老人斑」とよばれるシミ「アミロイド斑」がみられるようになります。
「老人斑」は加齢に伴って脳にみられるタンパク質の沈着ですが、これは神経細胞の減少や機能低下が促進され、アルツハイマー病の方に多くみられるものです。
認知症の有病率は加齢と共に上昇していきますが85歳以上になると3人に1人が認知症と言われています。
年を取ると、認知症になりやすくなります。
②末梢神経
神経の信号を伝える速度が遅くなります。
それにより、反射が低下・消失したり、感覚が鈍くなったり、筋力が低下するなどがあります。
その為、物をつかみ損ねて落としてしまったり、水や湯の温度調節を誤ってしまうなどの生活上の支障をきたしてくることが多くなります。
③自律神経
高齢者の自立機能調節は普通の状態では
比較的良好ですが、急激な環境変化に対処しにくいです。
1)心肺機能:
心機能の老化により、心臓への負担がかかった後、平常状態へ戻るのに時間がかかります。
階段などの垂直方向への移動による心拍への負担が大きくなります。呼吸器の老化により肺活量が低下します。又、呼吸機能の低下により、疲労しやすくなります。
2)排尿調節:
腎臓・膀胱等の老化により、頻尿や残尿あるいは失禁などが起こります。
3)体温調節:
急激な温度変化への適応能力が低下し、風邪をひきやすく夏の暑さに負けるという事が起こります。
このように、運動している時に息がきれたり疲れやすくなったり、
尿意や便意をうまくコントロールできにくくなったり、気温の上昇に対してうまく汗をかけなかったりします。
【生理的機能の変化と特徴のまとめ】
①〜③まで生理的機能の変化と特徴について見ていただきました。
体の中でも加齢による変化がさまざまに起こっていることが理解できたのではないでしょうか。
①の画像でもあったように65歳を境に全体的に生理的機能が低下をしていきます。
目には見えにくい部分ではありますが、加齢と共にそういう変化が起こるという事を
前もって理解しておくことで周りにそのような対象者がいた場合に理解し対処しやすくなると思われます。
以上で今回の記事「加齢による身体機能と生理的機能の変化と特徴」についての内容を終わりとさせていただきます
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました!
【引用・参考文献】
●作業療法学全書第7巻:老年期障害(改訂第2版)
●健康長寿ネット:骨粗鬆症、体重減少、骨関節変形、高齢期に多い運動器疾患、高齢者の神経系の変化
●社会医療法人同仁会 耳原鳳クリニック:健康雑記帖
●千葉県ホームページ:女性はなぜ骨粗鬆症になりやすいのですか
●Yoshimura N, Muraki S, Oka H, et al.: Prevalence of knee osteoarthritis, lumbar spondylosis and osteoporosis in Japanese men and women: The Research on Osteoarthritis/osteoporosis Against Disability (ROAD). J Bone Miner Metab.2009; 27: 620-628.