高齢者の加齢による変化と特徴②
今回は、前回に引き続き加齢による変化についてまとめてみたいと思います。
運動機能の変化と特徴
①姿勢制御
姿勢制御能力の低下により、転倒が増加します。 特に、60歳を過ぎたあたりから顕著に急降下し、リスクが高くなります。
姿勢制御システム…
視覚系と体性感覚系(特に、足底にある機械的受容器により受容される)と前庭系の感覚受容器(内耳に存在する耳石器と三半規管)に刺激が入力されます。空間の身体位置を知る情報となり、中枢神経系によって統合・処理されます。最終的に、筋骨格系の運動系に出力されます。
②歩行
加齢により歩幅が減少し、歩行速度が低下します。
【歩行速度と寿命について】
引用元:岐阜新聞web .教えてホームドクター.歩行速度と寿命
イギリスで行われた47万4919人の調査データを解析した研究では、歩行速度が速いと自己申告した男性の推定寿命は85・2~86・8歳、女性は86・7~87・8歳です。一方、歩行速度が遅いと自己申告した男性の推定寿命は64・8歳、女性は72・4歳です。肥満度や握力といった因子よりも歩行速度の方がより密接に寿命に関係しています。
この結果から、寿命との関係としては肥満度や握力よりも
歩行速度が大きく関係するようです
つまり、歩行速度が速くなればなるほど、寿命も伸びるという事になります。
知的機能の変化と特徴
①知能
高齢者では、加齢により 結晶性知能よりも 流動性知能の方が低下しやすいです。
結晶性知能… 過去に習得した知識 や経験を基にして日常生活の状況に対処する能力を支える知能
流動性知能… 新しい事を学習したり憶えたりするような知能。経験の影響を受けにくい。
②記憶
<記憶の時間の長さによる分類>
●感覚記憶
文献引用先: 認知症ねっと
映画の映像や会話のように連続したものを認識するため、感覚器官で一瞬だけ保持される記憶です。
●短期記憶
電話番号をその場で暗記したり、その場にいる人数を覚えたり、感覚記憶を意識することによって保持される記憶で短いものでは20秒程度、長いものでは数か月間記憶することができます。
●長期記憶
自分にとって重要な人の名前や、心に残った曲のフレーズを覚えるなど、短期記憶が言語やイメージ化されることで定着する記憶です。一度長期記憶として定着すると、数時間から数十年間保持されます。
高齢者の記憶は、加齢を経ても認知症の方のように認知機能に問題がなければ短期記憶の低下は少ないです。
しかし、長期記憶は低下します。長期記憶の中で、最も保持されるのは手続き記憶で、又感情を伴う記憶に対しては保持されやすいです。
備考
このグラフは、登山雑誌の中の運動能力の加齢による変化を表している表です。
これによりますと、「柔軟性」「敏捷性」「持久力」等はそれ程急激に低下はしていませんが、「バランス能力」に関しては他の能力と比較すると顕著に下降しています。
そのため、転倒・転落については、常日頃から対策を講じておく必要があるということが言えます。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました
【引用・参考文献】
●作業療法学全書第7巻:老年期障害(改訂第2版)