「筋力」と加齢や姿勢との関係



前回の「サルコペニアと身体機能について」の記事では

筋肉量低下、筋力の低下、身体機能の低下について
主に診断内容について書かせてもらいました


今回は
「筋力」について深めてみたいと思います



それを通して

「筋力」と加齢の関係や
「筋力」と姿勢の関係について


まとめてみたいと思います


今回の記事の目的について

この記事で「筋力」について深めて、加齢や姿勢との関係についてわかりやすく説明する








筋力とは


筋力とは
筋肉が一回の収縮で発揮する力 です


それによって
体にある各関節を動かすことができます

図:筋力発揮の流れ


筋力は

筋肉量が大きければ
その分関節を動かす力も大きくなります


反対に

筋肉量が小さければ
関節を動かす力が小さくなります




そのため

日常生活で体を動かして何か行動をするためには
その行動をするための最低限度の筋力(筋肉)が必要なのです



若い時には
特にトレーニングをしなくても

病気でなければ生活する上で困ることはなかったと思います



ですが


年をとってくると
筋力が自然と低下してしまうので

それを補うためには
「運動」が必要になってきます



筋力と「加齢」について



加齢により年を重ねると
若い頃に比べて自然と筋肉量は低下していきます


筋肉量の20歳からの変化率
引用元:「ロコモ」、その原因と対策.TANITA


このグラフを見ると40歳以降全身の筋肉量が低下しています


その中で

特に腕や体幹に比べて
下肢の筋肉量の低下が大きいです



なので


歩いていて今までできたのに
最近急に足が上がらなくなったり

ふらつくようになったり
つまづきやすくなった


というのがみられた場合
加齢による筋力低下が原因かもしれません



更にはその中で

特に、個別で低下しやすい筋肉
というのがあります



また

年をとるだけでなく使わないことで低下しやすい筋肉
というのもあります

図:不活動や加齢により低下しやすい筋肉


加齢により低下しやすい筋肉


「脊柱起立筋」
「腹斜筋」
「大腰筋」

これらは「体幹を伸ばす・横に曲げる・ひねる、
股関節から足を曲げる、姿勢の安定」
のための筋肉です



●動かないことで低下しやすい筋肉


「腹横筋」
「多裂筋」
「中殿筋」
「大腿四頭筋」
「ヒラメ筋」

これらは「体幹の静的・動的な安定、 股関節から足を外に上げる、
膝を伸ばす、足で床をける」
ための筋肉です




以上の筋肉をまとめると、姿勢を保ったり・歩いたりする」
ための筋肉になりますね




筋力と「姿勢」について



前の項目で 筋肉の動きとして

姿勢を保つ
というのがありました


この姿勢を保つ筋肉は

抗重力筋
と言われています



図:抗重力筋


この筋肉は首から足首までお腹側と背中側の両方に
ついていて体を重力に負けないように支えています


では


もしその筋肉が働かなくなると
人の姿勢はどうなるのでしょうか?


図:抗重力筋と姿勢の変化


上の図のように背中が丸くなって前かがみになり
一番左のおばあさんのように身長がちぢんでいきます



また


姿勢が曲がっていくことで
歩くのが遅くなったり
歩いていて転びやすくなります




なので


抗重力筋を筋力トレーニングすることで

姿勢を保つことができたり
歩くのが速くなったり
転びにくくなります




インナーマッスルとは



先ほどの動かなかったり加齢により
低下しやすい筋肉をまた確認してみます



画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 不活動や加齢により低下しやすい筋肉.png


【インナーマッスルについて

●インナーマッスルとは身体の深いところに位置する筋肉で深層筋のことを指します。インナーマッスルに対してアウターマッスルは、身体の表面に位置する筋肉のことを指し、表層筋のことを指します


●インナーマッスルは身体の深層に位置しており、見た目には働いていることを確認することは難しいですが、関節の安定や内臓の安定に働き、動作時にもアウターマッスルとともに働いて、姿勢の保持や動作のサポート、内臓の正しい働きを促すために作用しています


●長い時間活動し続けられることや、バリエーション豊かな姿勢や動作を行うにはインナーマッスルとアウターマッスル双方のバランスのとれた働きが必要となってきます

引用元:インナーマッスルとは.健康長寿ネット


先程の図の中では

「腹横筋」
「多裂筋」
大腰筋」

がインナーマッスルです



これらの筋肉が
うまく作用することで


姿勢が安定したり
体の痛みが減ったり
体が疲れにくくなります



私の経験ではありますが


利用者様と運動をするときに
運動の最初に腹圧を高められるように腹式呼吸(ドローイング)
を取り入れたりもします


また


運動時には座っていたり立っている姿勢を頭~骨盤~足先までを
できる範囲でなるべく天井に対してまっすぐな姿勢を
保持するように意識してもらったりします





インナーマッスルを意識した運動としては
”ピラティス” が有名です

もし興味がある方はSNSでそちらを検索してみてください




おわりに



今回は「筋力」をテーマに

それを通して

「筋力」と加齢の関係や
「筋力」と姿勢の関係を

みていきました



加齢になると下肢の筋力低下が著明です


また


抗重力筋も低下しやすく
そのため姿勢では腰が曲がりやすくなります



高齢者に

●中等度の筋力トレーニングと有酸素運動をして、筋力が改善された報告や

●高齢者に対する60%1RM以上の筋力トレーニングで、筋力は増加した

といった報告は多く

高齢者でも筋力トレーニングは効果的です!!






集団体操やレクリエーション や
ご家庭で体操や運動をするときに

不活動や加齢により低下しやすい筋肉や
抗重力筋というのを

少し意識してみてはどうでしょうか?



そして


高齢のご家族や
高齢の利用者様と運動や体操を通して

その部分を働かせるように意識して
一緒に短時間からでも行ってみるのもいかがでしょうか


また

加齢により姿勢が崩れてくると関節や骨なども変形するために
姿勢を治すのが不可逆的な場合も多くあります


その場合には

道具の活用や環境を整えるのも有効です





例えば
歩行器や杖など自助具を使ったり

普段生活の中でよく移動するルート上には床に物を置かないようにしたり

滑ったりつまづきやすいもの(マット等)は裏面に滑り止めを敷いたり

それ自体をなくしてしまうのもありかもしれません




また
少しの段差でもつまづきやすい場合には

間に段差解消のものを福祉業者さんに相談したりして
設置する方法もあります



また

家具(棚やテーブル)の配置を工夫してなるべくつかまりながら移動できるように変更するのもありだと思います





今回も最後まで読んで下さりありがとうございましたm(__)m







【引用・参考文献】

●「ロコモ」、その原因と対策.TANITA
●インナーマッスルとは.健康長寿ネット
●2.サルコペニアの臨床研究から考える介護予防.池添冬芽.第55回日本老年医学会学術集会記録.2013:50
●教育講座「サルコペニアとリハビリテーション」.千田益生他.Jpn Rehabil Med.2017:54
●”臨床思考”が身につく運動療法Q&A.高橋哲也編.医学書院.2016

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