【認知症クイズ⑪】学習および記憶とは?
前回は認知症の【中核症状】の中の『実行機能』について
クイズ形式で紹介しました
今回は3つ目の『学習および記憶』について
クイズ形式で考えながら学んでいければ
と思います
クイズ形式で新しいことを学び
脳の活性化と知識を
深めやすくなると思います(^-^)
「認知症」という病気がより
理解しやすくなれる一助になれれば
と思います
今回の記事の目的について
認知症の【中核症状】の中の『学習および記憶』についてクイズ形式で学習する
『学習および記憶』に関するクイズ:5問
次の問題は『学習および記憶』に関する問題です
設問の選択肢の中から適切なものを選んでみて下さい
≪問題≫
【問題1】
「認知症」は一般的な「物忘れ」とどのように違うのでしょうか?
①「認知症」は「物忘れ」と同じように体験は一部分のみを忘れてしまうが、物忘れに対する自覚はない
②「認知症」は「物忘れ」と異なり体験の全体を忘れてしまい、かつ物忘れに対する自覚もない
③「認知症」は「物忘れ」と異なり体験の全体を忘れてしまうが、物忘れに対する自覚はある
【問題2】
アルツハイマー型認知症の場合には、記憶に関しては「最近の記憶」と「昔の記憶」ではどちらの方が忘れてしまいやすいでしょうか?
①最近の記憶
②昔の記憶
③両方とも同じ
【問題3】
「認知症」の中で初期から記憶障害が著明なのは次のうちどのタイプでしょうか?
①アルツハイマー型認知症
②脳血管性認知症
③レビー小体型認知症
【問題4】
記憶は「内容」による分類では『陳述記憶』と『非陳述記憶』の2つに分類されます。これは、言葉や文章で表すことができる記憶と言葉では表せない記憶で分かれています。
では、自転車に乗ったり、楽器演奏をしたり、水泳をする等の技能・技術的な記憶といわれている「手続き記憶」はどちらに当てはまるでしょうか?
①陳述記憶(言葉や文章で表すことができる記憶)
②非陳述記憶(言葉では表せない記憶)
【問題5】
これは、「手続き記憶」に関する問題です。
アルツハイマー型認知症では病状が進行した時には、昔のことに関する記憶と、昔覚えた技能的な記憶(手続き記憶)はどちらの方が病期の後期まで保たれやすいでしょうか?
①「手続き記憶」の方が後期まで保たれやすい
②「手続き記憶」の方が初期から低下しやすい
③昔のことに関する記憶も、昔覚えた技能的な記憶(手続き記憶)もどちらも同じ時期に低下していきやすい
≪解答≫
-
「認知症」は一般的な「物忘れ」とどのように違うのでしょうか?
-
②「認知症」は「物忘れ」と異なり体験の全体を忘れてしまい、物忘れに対する自覚もありません
「物忘れ」では体験の一部分のみを忘れるだけですが、「認知症」の場合には体験全体がすっぽりと記憶が抜け落ちてしまいます。
そのため、自分自身が自分が物忘れをしているという事に気づいていないため、病識がないといわれてしまいます。
-
アルツハイマー型認知症の場合には、記憶に関しては「最近の記憶」と「昔の記憶」ではどちらの方が忘れてしまいやすいでしょうか?
-
①最近の記憶
アルツハイマー型認知症の場合には、近時記憶(数十秒~数日の記憶)の障害が病気の初期から目立ちます。進行に伴い、「近時記憶障害」→「即時記憶障害」→「遠隔記憶障害」→「完全健忘」になります。
-
「認知症」の中で初期から記憶障害が著明なのは次のうちどのタイプでしょうか?
-
①アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、記憶障害から発症します。
また、記憶障害については近時記憶(数十秒~数日の記憶)の障害が病気の初期から目立ちます。
-
記憶は「内容」による分類では『陳述記憶』と『非陳述記憶』の2つに分類されます。
これは、言葉や文章で表すことができる記憶と言葉では表せない記憶で分かれています。
では、自転車に乗ったり、楽器演奏をしたり、水泳をする等の技能・技術的な記憶といわれている「手続き記憶」はどちらに当てはまるでしょうか? -
②非陳述記憶(言葉では表せない記憶)
手続き記憶は運動やスキルの記憶で、練習すると「運動を覚え」てその運動が上達するという、体で覚える記憶です。
-
これは、「手続き記憶」に関する問題です。
アルツハイマー型認知症では病状が進行した時には、昔のことに関する記憶と、昔覚えた技能的な記憶(手続き記憶)はどちらの方が病期の後期まで保たれやすいでしょうか? -
①「手続き記憶」の方が後期まで保たれやすい
手続き記憶には海馬や側頭葉(陳述記憶に関わる脳の部位)ではなく、小脳や大脳基底核が関与していると考えられています。
アルツハイマー型認知症では、小脳の老人斑出現は軽度で、手続き記憶は障害されにくいといわれています。また、長い時間がかかって身についた習慣(手仕事・ゲーム)は失われにくいといわれています(引用元:Ribot 1881)
パーキンソン病(大脳基底核の損傷)や小脳変性症患者では、小脳や大脳基底核の障害が起こるので「手続き記憶」が障害されてしまいます。
『学習および記憶』とは
記憶とは
引用元:認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント第2版
記憶内容の観点と、保持時間の観点から、概ね以下のように分けられます
このように、
記憶内容では、
●陳述記憶:言葉や文章で表すことができるもの
●非陳述記憶:言葉では表せないもの
記憶の保持時間では、
●即時記憶:数十秒以内のもの
●近時記憶:数分~数日のもの
●遠隔記憶:数週~数十年のもの
にそれぞれ「内容」「時間」で分類されます
認知症の人が記憶障害でどのような困難を
抱えるかについていくつか例を挙げておきます
●同じ話を何度も繰り返してしまう
●最近のことを思い出せない
●スケジュール管理が難しくなる
●物をしまった場所を忘れて探すのが大変になる
●薬をいつどのくらい飲んだのか、どのくらい飲めば良いのか分からなくなる
ような様子がみられるようになります
記憶の中では「手続き記憶」は
アルツハイマー型認知症では特に病気の後期まで保たれやすい記憶です
そのため、
この記憶を活用した関わり方をいかすことで
ご本人の自尊心を高めたり、
役割を演じてもらうことができます
そうすることで、
ご本人も元気になったり
やる気が高めることがしやすくなります
おわりに
今回は認知症の【中核症状】の1つ『学習および記憶』について
クイズ形式でまとめてみました
次回は他の【中核症状】について
クイズ形式でまとめていきたいと思いますので
宜しければお付き合いください
今回も「認知症クイズ」に
お付き合いくださりありがとうございました(^-^)
【参考・引用文献】
●認知症ケア標準テキスト改訂第3版認知症ケアの基礎.一般社団日本認知症ケア学会編
●なぜ認知症のある人とうまくかかわれないのか?.石原哲郎著.中央法規
●認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント.山口晴保編.協同医書出版
●宣言的記憶と非宣言的記憶.脳の病気まるわかり.はしぐち脳神経クリニック