音楽療法は認知症に良い効果があるの?
認知症のお薬を使わない代表的な治療方法の1つとして「音楽療法」があります。
音楽療法とは、その名前の通り”音楽”を使った活動です。
具体的には、音楽を聴いたり、歌ったり、楽器を演奏したりという活動です。
皆さんは、
「音楽というのは、身近なもので楽しそうな活動だれどもそれって治療的には効果はあるのかな?」
「音楽療法って、どんな効果があるのかな?」
と、思ったりはしませんか?
実は、その効果についてはある程度実証されています。
具体的な効果としては、認知症ガイドライン(2017)でも
不安については中程度、抑うつや行動障害に対しては効果が認められています。
音楽療法は、音楽を使って対象者の「感情」に働きかけて行動や態度などを良い方向へ変える力を持っているようです。
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【音楽の治療的な歴史について】
引用元:アルツハイマー型認知症の音楽療法.岡部多加志他.バイオメカニズム学会誌Vol30.No2(2006)
原始社会においては心身の病気を癒すためにシャーマンによる「悪霊払い」として使用されていた。 古代エジプトでは魔術、宗教、医療の3領域が文化していたが、僧侶や医師たちは音楽を魂の治療薬として医療の中に取り入れていた。現代社会においては、1950年頃より、欧米で音楽療法に関する組織作りや音楽療法士の認定制度が確立されています。一方、我が国においては1955年以降から積極的な活動が認められる。
この様に、音楽療法の歴史はとても古くから存在し、独自の地位を築いていたようです。
今回は、音楽療法の具体的な内容やその効果について記事で書いていきたいと思います。
【目次】
音楽療法とは
【音楽療法】
引用元:認知症疾患診療ガイドライン2017.第3章治療
多種多様な。週1~5回、10~60分のプログラムが報告されている。音楽を聴く歌う、打楽器などの演奏、リズム運動などの方法があり、これらを組み合わせて構成することが多い。
音楽療法の具体的な内容について
【音楽療法の内容】
●人数:個人から集団まで問わない
病院や施設の現場では、グループ活動として使われることが多いようです
●内容:
活動的音楽療法(演奏療法) 楽器を演奏する、歌うなど
受容的音楽療法(鑑賞療法) 音楽を聴く
●内容の構成:
歌唱、体操、楽器演奏、鑑賞
●歌の内容例:
季節や自然に関する曲(童謡・唱歌・歌謡曲など)
人生歌(職業、結婚、両親、出身地などと関連する曲)
参加者の好きな曲(リクエストにより)
1人でもグループでも人数問わず、活動内容についても幅が広い内容です
音楽療法の効果について
<集団活動での効果について>
音楽療法教室のプログラムでは、4~5ヶ月間という短期間ではあったが、総合的に種々の能力向上(遂行機能・敏捷性・移動能力・活動性)が期待できることが示された。
引用元:効果的な認知予防事業に関する実践的研究-音楽療法とレクリエーション活動の取り組みに対する比較検討-.横井和美他.人間看護学研究5(2007)
今回のプロジェクトにおいては、音楽療法終了後の音楽療法士による評価および高次脳機能検査による評価において様々な大脳機能の賦活効果が認められた。
引用元:アルツハイマー型認知症の音楽療法. 岡部多加志他.バイオメカニズム学会誌Vol30.No2(2006)
集団での効果としては、大脳機能の賦活や身体機能の改善、活動性向上など広い範囲に効果がでていますね
認知症に関しては、音楽療法は不安の改善に効果量が中等度であるという、結果が得られている。MCIに関しては、楽器演奏により認知機能改善が見られ、正常集団については、楽器演奏が認知症の危険度を低下させる、ことが示されている。
引用元:楽器演奏・音楽療法の認知症予防効果に関する文献レビュー.赤澤堅造.奥野竜平.認知症対応生体医工学
認知症の人以外の軽度認知症の人や正常な高齢者についても、楽器演奏では認知機能の改善に成果が出ていますね
<個人での活動での効果について>
自分の興味のある音楽を聴くことは、大脳機能を賦活する上で有効な手段の一つといえる。
引用元:アルツハイマー型認知症の音楽療法. 岡部多加志他.バイオメカニズム学会誌Vol30.No2(2006)
●過去の写真を唱歌などを流しながら提示する「思い出ビデオ」は、認知症患者が自宅でも1人で長い時間に渡り視聴を楽しみ、精神的に安定することが示された。
引用元:高齢者が1人でも継続できる音楽療法システムの構築に向けて.大島千佳他.情報処理学会研究報告.Vol.2010-HCI-139.No.1
●”Media Memory Lane”は、懐かしい音楽と映像を流すシステムで、認知症患者の攻撃性が緩和された。
個人で音楽を聴いたり、映像をみることは大脳機能の賦活や気持ちをリラックスさせる効果がありますね
音楽療法を行う上でのポイントは?
<曲の選択について…集団活動>
季節や自然、人生歌、好きな曲と性質の異なる3種の曲を組み合わせた音楽療法プログラムを実施することで、認知症高齢者のエピソード記憶を効率よく引き出すことができると思われる。
引用元:音楽療法における認知症高齢者の長期記憶の想起に関する検討.片桐幹世.東京福祉大学・大学院紀要第2巻第2号(2012)
性質の異なる3種の曲を組み合わせ、また網羅することで、認知症高齢者のエピソード記憶を効率よく引き出し、高齢者同士、あるいは高齢者と施設職員とのコミュニケーションの促進を高めることが可能であると考える。
引用元:音楽療法における認知症高齢者の長期記憶の想起に関する検討.片桐幹世.東京福祉大学・大学院紀要第2巻第2号(2012)
同じ性質の曲だけでなく、性質の異なる曲を組み合わせた方が記憶の想起やコミュニケーションが引き出されやすいようです
●対象者は10~20代や0~30代の記憶を多く想起したことである。
引用元:音楽療法における認知症高齢者の長期記憶の想起に関する検討.片桐幹世.東京福祉大学・大学院紀要第2巻第2号(2012)
これは、人生の中で最も活動的・刺激的な時期の記憶を想起したと考えられる。
●特に季節や自然に関する曲は、含まれるキーワード(海、森など)により記憶が想起される点が特徴であった。
選曲については、参加者の年代やテーマについて上のようなことを配慮して構成を考えるといいのかもしれません
<曲の選択について…個人活動>
各個人の興味のある音楽を聴くことによりα反応性の増強を認めたことにより、音楽療法には好みの音楽を取り入れていく事が重要であると考えられる。
引用元:アルツハイマー型認知症の音楽療法. 岡部多加志他.バイオメカニズム学会誌Vol30.No2(2006)
個人で音楽鑑賞する場合には、当たり前かもしれないけれど自分の好きな曲を聴くことが一番のようです
<集団での進行の仕方について>
歌唱前に、使用曲の背景、時代について説明し、歌唱後は参加者達が自由に発言する機会を設けた。
引用元:音楽療法における認知症高齢者の長期記憶の想起に関する検討.片桐幹世.東京福祉大学・大学院紀要第2巻第2号(2012)
認知症患者の脳の記憶の部位を活性化するための試みとして、歌唱曲にまつわる回想を随所に取り入れた。歌唱曲については過去の回想のみならず、クライエントの「今の気持ち」を表現するきっかけとしても活用し、他患とのコミュニケーションのツールとなるようアプローチした。
引用元:アルツハイマー型認知症の音楽療法.岡部多加志他.バイオメカニズム学会誌Vol30.No2(2006)
歌の前後には、参加者の記憶を想起させやすいようなアナウンスをしたり、歌が終わった後に参加者がお気持ちや思い出話を吐き出せる時間を作る配慮をすることがいいのかもしれません
まとめ
今回は、音楽療法の具体的な内容やその効果について記事で書いていきました。
内容については、楽器演奏や歌を歌うという積極的な活動から、音楽鑑賞するという受容的活動まで様々でした。
また、音楽療法に関する効果も、大脳機能の賦活や身体機能や活動性の向上や不安を軽減しリラックスさせてくれるなど幅広く効果があるようです。
”楽器演奏”については、非認知症の方も認知症のリスクを軽減する効果もあるようでした。
病院や施設では音楽療法は集団活動の一環として活用されております。
その時に、「音楽療法を行う上でのポイントは?」の項目の部分を参考程度に読んでいただければと思います。
また、ご自宅で過ごされている時にも日常活動の合間に音楽鑑賞はいかがでしょうか?
その時は、あなたの好きな曲を聴くことが一番です(^-^)
最後になりましたが、
ドングリマツリではYouTubeで新しく「ピアノ演奏による音楽」の動画をアップしております。
そして、記念すべき1曲目は皆さんも馴染みがある「ふるさと」です。
こちらは、歌いやすいように通常よりもゆっくりとしたテンポになっております。
ご自宅でも施設や病院でも、いつでもどこでも、歌うのも聞くだけでも、自由にお使いいただければと思います。
今回も、ここまで読んで下さりありがとうございましたm(__)m