下肢筋力と身体機能について
以前のブログ記事の
「『筋力』と加齢や姿勢との関係」
では
加齢により筋力低下が40歳ごろから
全身に生じること
また
その中で特に
下肢の筋力低下が最も大きいこと
をお話ししました
今回は
その「下肢筋力」について
●下肢筋力ってそもそもなに?
●低下するとどうなるのか?
●簡単に分かる測定方法とは?
●下肢筋力のきたえかたは?
の内容を一緒に見ていけたらと思います
そして
最近下肢の筋力の低下が気になる方や
高齢のご家族がいる方や
お仕事で高齢者の方と関わる方に
日常の中で少しでもお役に立てればと
思っております
”『筋力』と加齢や姿勢との関係”について興味のある方は
下の記事も併せて読んでもらえたらと
思います
【目次】
下肢筋力ってなに?
まずは「下肢」について
その全体像を確認していきたいと思います
「下肢」を構成する関節は
からだの上から
●股関節
●膝関節
●足関節
の3つの関節から成り立っています
では
次からは
各関節の”役割”について
みていきたいと思いますね
股関節は
足の付け根の部分です
体重を支えながらも
足を前後左右に
そして
大腿骨を回すといった
とても広い範囲に関節が動かせます
膝関節は
膝小僧のある部分です
動きとしては
膝を曲げる・伸ばす
のみですが
歩く時や運動する時に
とても重要な働きをします
足関節は
足首の部分です
体重がかかった時に
その衝撃を吸収したり
歩いたりするときに
速度を速めてくれる働きをします
それらの関節には
合計56個の筋肉が
ついています
以上が
下肢の筋力になります
では
次に下肢の筋力低下の及ぼす影響について
みていきたいと思います
下肢筋力が低下するとどうなるの?
では
下肢筋力が低下すると
一体どうなるのでしょうか?
「下肢筋力」は
●立ち上がること
●歩くこと
●階段の昇り降り
などに関ります
なので
筋力低下は
それらの動作が難しくなる
ということになります
そして、、、
高齢女性を対象とした縦断研究では、下肢筋力が低い群では、高い群よりも3年後の重篤な歩行能力低下の出現する危険が約1.9倍であった。
引用元:13.身体的虚弱(高齢者)理学療法診療ガイドライン
下肢筋力の低下が将来の転倒発生と関連することは数多くの研究により明らかにされている。
引用元:13.身体的虚弱(高齢者)理学療法診療ガイドライン
歩行能力の低下→転倒しやすくなる
のです
なので、
日常生活で
転ばずに自由に移動する能力を維持するためには
下肢の筋力を鍛えることは
とても重要になります
下肢筋力を測定する方法は?
では
ここからは
誰でもどこでも簡単にできる
下肢の筋力を測定する方法について
おはなしします
その前に
まず下肢筋力の中で
代表的な筋肉をお伝えします
それは
「膝伸展筋の筋力」
です
膝伸展筋力は下肢支持性を反映する筋力指標であり、高齢者や片麻痺患者、大腿骨頸部骨折患者の移動能力の重要な規定要因として知られている。よって、本邦における膝伸展筋力の標準値を示すことは、筋力低下の重症度を判断するうえで有益である。
引用元:健常者の等尺性膝伸展筋力.平澤有里他.理学療法ジャーナル第38巻4号
・下肢の筋力の代表値として膝伸展筋力が用いられることが多いです。
引用元:”臨床思考”が身につく運動療法Q&A.高橋哲也編.医学書院
・等尺性膝伸展筋力の測定は握力測定よりも煩雑になるものの、得られた筋
力値は歩行や立ち上がり動作や階段昇降能力と密接に関りがあります。
本来きちんと筋力を測定するためには
「ハンドヘルドダイナモメータ(HDD)」
という機器を使うことが推奨されています
ですが
機器は高額で一般的に測定できるものではないので
今回はどこでもできる方法を
お伝えします
それは
「椅子(ベッドでも)からの立ち上がり動作」
です
方法は
両手を使わないために胸の前で腕を組み
その状態で床から何㎝の高さから
お1人で立ち上がれたか?
という方法です
・上肢を使用しない40㎝の椅子からの立ち上がりの可否における検討では、等尺性膝伸展筋力が0.35kgf/kgを上回る場合、全例で立ち上がりが可能と示されています。一方、0.2kgf/kgを下回った症例では全例で不可能でした。
引用元:”臨床思考”が身につく運動療法Q&A.高橋哲也編.医学書院
・階段昇降動作、昇段(30cm)動作の可否と等尺性膝伸展筋力との関連では、等尺性膝伸展筋力が0.5kgf/kgを上回る場合、全例で可能となります。
●40cmの高さからの立ち上がりが可能
→膝伸展筋力:0.2kgf/kg~0.35kgf/kg
●30cmの高さからの立ち上がりが可能
→膝伸展筋力:0.3kgf/kg~0.5kgf/kg
40㎝の高さから腕を使わずに立ち上がりができない人は
立ち上がったり歩くことを自力で行うのが難しくなります
階段の昇り降りや30㎝の高さを昇段することを自力で安定して行うため
には最低でも30㎝の高さから腕を使わずに立ち上がる必要があります
おおざっぱな目安にはなりますが
参考までに
実際に使ってみていただければと思います
下肢筋力をきたえるには?
<まず運動を行うにあたり留意点>
●運動を行うにあたりその前後でまず準備体操・整理体操を行う
↑体を動かしやすくしたり、翌日に疲労を残さないためです
●転倒しないようになにかあった時にすぐにつかまれるような場所で行う
また、つかまらないとやりにくい方は何かにつかまって行ってください
●立ったままやりにくい方はできる運動を座って、もしくは座ってもやりに
くい方はそれを寝た状態で行う
●運動中は息を止めずに呼吸をしながら行う
●自覚症状に注意してください→過度な息切れ、倦怠感、激しいめまい、顔面蒼白
それらがみられた場合にはすぐに休憩する
<筋力トレーニング>
●スクワット
:難しい場合に”立ち上がり・座り運動”でも代用が可能です
①両足を肩幅ほどに開きます
②背筋を伸ばしてお尻をうしろに突き出すようにします
③再び元に戻ります
※足先は内側を向かないように、また膝を曲げた時に膝が足先よりも前に出ないようにしてください(膝を傷めないために)
●立ち上がり・座り運動
①椅子に座る
②足裏はしっかり床に着き、ゆっくり立ち上がる
③立ち上がる
④椅子の位置を確認して、ゆっくり座っていく
※座る時にゆっくり行うことで足腰への負荷が高くなります
●つま先上げ
:座位・臥位でも可能です
①まっすぐに立った状態で踵を高く持ち上げる
②再び踵を床に下ろす
※ゆっくりと行います
●膝伸ばし
:臥位でも可能です
①座った状態でつま先を上に向けて、片足ずつ膝を伸ばしていく
②上げた足を再び下す
①まっすぐに立った状態で踵を高く持ち上げる
②再び踵を床に下ろす
※ゆっくりと行います
●太もも上げおろし
:座位・臥位でも可能です
①立った状態で背筋を伸ばしてももをなるべく高く上げます
②再び足を元の状態に戻します
※ゆっくりと行います
1回の回数は10~20回、セット数は1~3セットが目安です
<有酸素運動>
●ウォーキング
外を散歩します(外でなくてもおうちの中を歩いたり、その場で足踏みでも有効です)
※自然歩行よりも早歩きの方が筋活動が増加して運動負荷が高いです
歩行時間は連続でなくても細切れに行っても同様の効果を得られます
ので、1日のうちに分割して行うのもおすすめします
おわりに
今回は
その「下肢筋力」について
●下肢筋力ってそもそもなに?
●低下するとどうなるのか?
●簡単に分かる測定方法とは?
●下肢筋力のきたえかたは?
についてみていきました
まず最初に
下肢についてどういうものなのかを
次に低下した場合に難しくなる動作や転倒との
関係について
お話しをさせていただきました
そして
その次に
床からの立ち上がりでの下肢筋力の評価
を紹介しました
下肢筋力の代表値である膝関節伸展筋力の程度を
立ち上がり動作から現在の下肢筋力のレベルを
確認し、現時点での目安としてみてはどうでしょうか
また
後半の運動部分では
きっと皆さんが普段から取り組んでいる運動が
多くあったと思います
これからも
1つのメニューだけでも
1回からでも
継続して取り組むことが
有効ですのでできる範囲で
取り組むのはどうでしょうか?
最近は
外出規制でなかなか思うように外に出られなかったり
また通いの場がお休みしていたりと
活動量が低下しがちです
外に出るのが難しい場合には
おうちの中でやることもとても有効です!!
また
ドングリマツリでは
●お散歩動画 や
●童謡の歌の動画 を
YouTubeでアップしております
ながら運動として
また
外に行ってお散歩した気分になれるように作成していますので
散歩動画を見ながらその場で足踏み運動も
いかがでしょうか?
今回もここまで読んで下さり
本当にありがとうございましたm(__)m
おまけです…
と言われています
歩くさいの歩行速度の目安として
みてください
【引用・参考文献】
●13.身体的虚弱(高齢者)理学療法診療ガイドライン
●健常者の等尺性膝伸展筋力.平澤有里他.理学療法ジャーナル第38巻4号
●”臨床思考”が身につく運動療法Q&A.高橋哲也編.医学書院
●大腿四頭筋 の廃用性筋萎縮 を防止するために必要な下肢の運動について.市橋則明.体力科学(1993)42,461~464