生活不活発病とその予防・改善

コロナ感染の拡大に伴う緊急事態宣言が


7都道府県から全国に拡大し


先月7日から今月の5月6日まで不要不急の外出自粛が


継続しております





その影響でこの約4週間はみなさん自宅で過ごす時間が増えて


外にでる機会が激減し友人・知人との交流もできない状況ですよね…




活動性が低下してしまう


生活リズムが崩れやすくなってしまう


時間だけがあるけど家の中で何をすればいいのかわからない


日中も本人が家にいるので介護負担が大きい


などなど


辛い状況が続いているかと思います




政府は今月6日以降も期間を延期する方向で調整中で


まだこの状況は続いていくことになります


早くこの状況が落ち着いて以前のような日常に戻れるとよいですが…





今回は


現在の状況で予測される


体やココロの不調について


それはどんな状態なのか?




また



それを予防・改善する方法について


一緒に考えていければらと思います


宜しくお願いいたします



【目次】






生活不活発病とは


【生活不活発病とは】
「生活不活発病」とは、「動かない」(生活が不活発な)状態が続くことにより、こころとからだの機能が低下して「動けなくなる」こと

引用元:お家でできる生活不活発病予防~ひとは作業をすることで健康になれる~.一般社団法人 東京都作業療法士会


図:生活不活発病の負のサイクル

「動くに動けない」状況から


そのために「動かない」でいると


「生活が不活発」になることで「生活不活発病」が起こって


「動けなく」なりがちになります




高齢者は特に起こりやすいです




そして


起こってしまうと


体だけでなく心も頭の働きも


全体的な心身機能が低下してしまいます



「生活不活発病」と同様の意味の状態として


「廃用症候群」


というものがあります


【廃用症候群とは】
特定の器官を長期間、動かさないでいることによって生じる身体機能の低下を指す

引用元:ここで差がつく”背景疾患別”理学療法Q&A.高橋哲也編.医学書院


原因としては


●病気の治療で動けなくなった

●高齢で動くことが難しくなった

●避難所などの特殊な環境下で普段より動かない状況が続いている



などです



今回の

「コロナ感染対策による外出の自粛の状態」は


3つ目にある”特殊な環境下”となります




それによって


●関節がかたくなる

●筋肉量の減少

●体力の低下

●血圧の調節能力の低下

●精神機能の低下

●認知機能の低下


などが起こりやすくなるとされています

表 生活不活発病の主な症状


上の表はそれらを


Ⅰ~Ⅲの3つに分類してまとめたものです


廃用症候群としては


「Ⅰ.体の一部に起こるもの」が


特に目立ちやすいかもしれませんが


精神や神経も含めて

全身に影響を与えるものになります


また

・生活不活発病の大きな特徴は、いったん起こるとあたかも雪だるまが坂を転げ落ちながらどんどん大きくなるように「悪循環」を起こして進行していくことである
・単に「心身機能」が低下するだけではない。生活行為すなわち「活動」や、社会への「参加」にも大きく影響する

引用元:広域災害における生活不活発病(廃用症候群)対策の重要性.大川弥生.IRYO.vol.59.No4


とも言われています



以上をまとめますと



生活不活発病(廃用症候群)は


●私たちのからだの一部だけでなく全身に影響を与える


●からだやこころの不調だけでなく、取り巻く生活環境すべてに影響を与える



ことになります



まずは



現在の状況が自粛前とどう変化しているのか


をみて確認して現状を知ることが大切です




ですので

次に厚労省で作成されている


チェック表を見ていきたいと思います




生活不活発病チェック表

【生活不活発病チェック表】

1.屋外歩行
災害前 :
□遠くへも一人で歩いてい
□近くなら一人で歩いていた
□誰かと一緒であれば歩いていた  
□ほとんど外は歩いていなかった
現 在 :
□遠くへも一人で歩いている
□近くなら一人で歩いている
□誰かと一緒であれば歩いている
□ほとんど外は歩いていない

2.自宅内歩行
災害前:
□一人で歩いていた
□伝い歩きもしていた
□誰かと一緒であれば歩いていた
□ほとんど歩いていなかった
現 在 :
□一人で歩いている
□伝い歩きもしている
□誰かと一緒であれば歩いている
□ほとんど歩いていない

3.その他の生活行為(食事、入浴、洗面、トイレなど)
災害前:
□不自由はなかった
□不自由があった(具体的な行為:
現 在 :
□災害前と同じ
□災害前よりも不自由になった
(具体的な行為:

4.車いす
災害前:
□使用していなかった
□主に自分で操作
□主に他人が操作
現 在 :
□使用していない
□主に自分で操作
□主に他人が操作

5.歩行補助具・装具の使用
災害前:
□使用していなかった
□屋外で使用
□屋内で使用 [種類: ]
現 在 :
□使用していない
□屋外で使用
□屋内で使用 [種類: ]

6.外出頻度(30 分以上の外出)
災害前 :
□ほぼ毎日   □週3回以上
□週 1 回以上 □月 1 回以上
□ほとんどしていなかった
現 在 :
□ほぼ毎日 □週3回以上
□週 1 回以上 □月 1 回以上
□ほとんどしていない

7.家事
災害前:
□全部していた □一部していた
□ほとんどしていなかった
現 在 :
□全部している □一部している
□ほとんどしていない

8.家事以外の家の中での役割
災害前:
□全部していた □一部していた
□ほとんどしていなかった
現 在 :
□全部している □一部している
□ほとんどしていない

9.日中活動性
災害前 :
□よく動いていた
□座っていることが多かった
□時々横になっていた
□ほとんど横になっていた
現 在 :
□よく動いている
□座っていることが多い
□時々横になっている
□ほとんど横になっている

引用元:生活機能低下予防マニュアル~生活不活発病を防ぐ~・厚労省


こちらはリストを見やすくチェックリストの用紙にしたものです↓

図:生活不活発病チェックリスト(生活機能低下を防ごう!厚労省)


このチェックリストは災害時に作成されたものです


今回は


災害時 → 緊急時宣言後


に置き換えてみてください




今回の外出自粛前後での変化はありましたでしょうか?




まず今の状態を知ることは大きな第一歩です!!




そして


現状を知ったうえで



次からはその解決方法について



一緒に見ていきたいと思います




予防・改善方法について


予防・改善のポイントは


「生活を活発化」


させることです



図:生活を活発化させるために…


「安静第一」と「無理は禁物」と思い込むと



生活不活発病が進んでしまいます



ので


●日中横にならない


●なるべく歩くようにする


●家の中で役割をもって動く機会を作る


ことがよいとされています





具体的な活動量の基準としては…



目安として厚労省の「健康づくりのための身体活動基準 2013」より



このような記載があります↓



図:65歳以上の身体活動の基準


寝たままや座りっぱなしにならなければ


どんな動きでもよいので


40分


毎日行うこと


が予防・維持によいとされています




もしそれだけでは物足りないという


十分に体力のある高齢者では




更に3.0メッツ以上の生活活動・運動に


取り組むことがなお良いとされています



ちなみに


「メッツ」とは


動強度の単位で、安静時を1とした時と比較して何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示したもの

引用元:e-ヘルスネット.「メッツ / METs」.厚労省


とされています




つまり


安静にしている時と比べて


どの位の負荷量なのか


を数値化したものです


そして


3.0メッツ以上の活動は



この中のものでは



全てになります




では



3.0メッツ未満の活動についても


以下に添付しておきます


参考にしていただければと思います


【3 メッツ未満の身体活動】

・皿洗いをする(1.8 メッツ)
・洗濯をする(2.0 メッツ)
・立って食事の支度をする
 (2.0 メッツ)
・こどもと軽く遊ぶ(2.2 メッツ)
・時々立ち止まりながら買い物や散歩を
 する(2.0~3.0 メッツ)
・ストレッチングをする(2.3 メッツ)
・ガーデニングや水やりをする
 (2.3 メッツ)
・動物の世話をする(2.3 メッツ)
・座ってラジオ体操をする
 (2.8 メッツ)
・ゆっくりと平地を歩く(2.8 メッツ)

引用元:運動基準・運動指針の改定に関する検討会 報告書.健康づくりのための身体活動基準 2013






疲れやすい方は、1回の活動量を減らしその分回数を増やしておこなうという
「少量頻回の原則」も有効です




おわりに


今回は

現在の状況で予測される


体やココロの不調について


それはどんな状態なのか?


また

それを予防・改善する方法について



一緒にみていきました




現在おかれている状況は



活動制限・参加制限という制限の多い



きびしい状況です




まだ先行きは不透明でこの生活は



しばらく続いていくかもしれません




皆さんは



高齢のご家族のいる方や


施設などで高齢の方と関わる方


だとおもいます



高齢者の方は特に「生活不活発病」に



なりやすいので



周りの方がサポート・支援をしてあげてください





まずは



今の生活が以前と比べて変わっていないか?


どうかを確認してみてください



そして


もし変化がある場合には


毎日の生活リズム(睡眠・食事・活動)


を保ちながら


趣味活動、運動、日光浴、お散歩などを


なんでも普段の中に少しずつ取り入れてみる


また


家事を普段通り行うのではなく


いつもとやり方を変えたり余計にひと手間加えてみる


のもいかがでしょうか



もし


ご本人だけでは活動量を増やすのが難しい場合には


周りの支援者が具体的にアドバイスしてあげたり


本人のやりがいにつながる役割をあたえてあげたり


と活動をサポートしていただけると


より活動量を増やせると思います







今回もここまで読んで下さりありがとうございました





【引用・参考文献】

●お家でできる生活不活発病予防~ひとは作業をすることで健康になれる~.一般社団法人 東京都作業療法士会
●ここで差がつく”背景疾患別”理学療法Q&A.高橋哲也編.医学書院
●広域災害における生活不活発病(廃用症候群)対策の重要性.大川弥生.IRYO.vol.59.No4
●生活機能低下を防ごう!「生活不活発病」に注意しましょう・生活機能低下予防マニュアル.厚生労働省
●運動基準・運動指針の改定に関する検討会 報告書.健康づくりのための身体活動基準 2013・厚生労働省
●草加シティウェブサイト.まずは自分のエクササイズ(Ex)値を知りましょう