『認知機能低下および認知症のリスク低減』(WHO ガイドライン) について


『認知症』の方は全世界で5000万人


毎年約1000万人ほどが新規で認知症になっています



→2030年には…”8200万人”


→2050年には…”1億5200万人”



と予想されています





それは認知症の人の人数が

「10年間で1.6倍 30年間で3倍の増加になるということです」



『認知症』の人は、


日本だけでなく世界的に
これからますます増えていくと予測されています






認知症のもっとも強力なリスク因子は

”加齢”


と言われています




それに関しては


以前の記事でも書かせていただきました↓


https://kawaguchi-website.jp/2020/07/19/%e3%80%90%e8%aa%8d%e7%9f%a5%e7%97%87%e3%82%af%e3%82%a4%e3%82%ba%e2%91%a0%e3%80%91%e8%aa%8d%e7%9f%a5%e7%97%87%e3%81%a8%e3%81%af%e3%81%a9%e3%82%93%e3%81%aa%e7%97%85%e6%b0%97%ef%bc%9f/




ですが、


リスク因子については他にもいろいろと明らかになっております



それに関しては


以前の記事でも書かせていただいております↓






昨年の2019年に世界保健機関(WHO)では


【認知機能低下および認知症のリスク低減】のためのガイドラインを発表しました!




この中では

加齢は認知機能低下の最も強力な既知の危険因子であるが、認知症が加齢の生来的な、あるいは不可避の結果ではないことは重要な点である。

いくつかの最近の研究によると、不活発なライフスタイル、喫煙、不健康な食事、過剰な飲酒などのライフスタイルに関連する因子が、認知機能低下や認知症と関連することが示されている。

高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、抑うつなど一定の病態が認知症の発症リスクと関連する。
その他の潜在的に修正可能な危険因子として、社会的孤立、知的な活動低下などがある。

潜在的に修正可能な危険因子が存在するということは、認知機能の低下や認知症発症を遅らせる基本的介入の実施などの公衆衛生的アプローチを通じて、認知症予防が可能であることを意味している

引用元:FOREWORD(実施概要).認知機能低下および認知症のリスク低減 WHOガイドライン


認知症のリスク因子としては…


●ライフスタイルに関連するもの

生活習慣病や抑うつなどの病態

社会的孤立や知的な活動の低下




が挙げられています





そしてこのWHOガイドラインの中では



それらのリスク因子を予防する手段として


『12のテーマ』での介入を推奨しております






それについては、



下記の図のように大きく「3つの領域」に分類がされております







今回の記事では



それらのテーマについて3つの領域に分類して考えていきたいと思います






【目次】




ライフスタイルの改善


●身体活動による介入:Physical activity interventions


・身体活動は、認知機能正常・軽度認知障害の成人に
 対して認知機能低下のリスクを低減するため推奨さ
 れる

 特に、正常の人に対しての方がリスク低減のための
 エビデンスは高く推奨されている



・身体活動とは、日課や家庭・地域社会と結びついた
 レクリエーションや余暇を使って体を動かすこと、
 通勤などの移動 ( 徒歩、自転車 )、仕事、家事、遊
 び、ゲーム、スポーツなどを含む


【推奨する内容】

●65 歳以上の成人は、150分/週の『中』強度有酸素運動、75分/週の『高』強度有酸素運  動、または、同等の『中~高強度』の運動を組み合わせた身体活動を行うこと

●有酸素運動は 1 回につき、少なくとも 10 分以上続けること

●筋力トレーニングは週 2 回以上、主要な筋肉群を使うトレーニングをすること





●禁煙介入:Tobacco cessation interventions


・禁煙介入は、他の健康上の利点に加えて、認知機能
 低下と認知症のリスクを低減する可能性があるため
 、喫煙者している成人に対して行われるべきである
 と推奨されている


・タバコ依存症は、認知症や認知機能低下だけでな
 く、他の障害や高齢者のフレイルや作業能力など
 加齢に伴う状態にも関連している


【推奨する内容】

●カウンセリングは最も頻繁に使用されるアプローチである

●マインドフルネスベースのアプローチ、認知行動療法、行動活性化療法、動機付け面接、不測の事態への対処、喫煙への曝露 / 嫌悪感な、他のアプローチも検討されている

●薬物療法の中で、ニコチン代替療法、ブプロピオンおよびバレニクリンが最も一般的である

●非薬物療法と薬物療法の組み合わせは、禁煙を支援する上で最も効果的である





●栄養介入:Nutritional interventions


・食事の変化が、糖尿病や脳血管疾患のような認知症
 リスクを高める多くの病的状態の予防に関わる


・『果物』と『野菜』と『魚類』の摂取と認知症リス
 クの低下との関連性は最も一貫性が高い
 
 魚を多く摂るほど、健康な参加者の記憶力低下が抑
 えられている

・多価不飽和脂肪(魚由来)の摂取も同様である


【推奨する内容】

●果物、野菜、豆類(レンズ豆、豆など)、ナッツ、全粒穀物(未加工のトウモロコシ、キビ、オート麦、小麦、玄米など)

●1 日あたり最低 400 g(5 人前)の果物と野菜

●1 日あたり約 2,000 キロカロリーを摂取する健康体重の人の場合、総エネルギー摂取量のうち遊離糖類からの摂取量は 『10%未満』であること

●食塩は 1 日あたり 5g(小さじ約 1 杯に相当)未満であること





●アルコール使用障害への介入:Interventions for alcohol use disorders


・アルコールの過剰摂取は世界的に様々な障害の主な
 原因の一つである
 認知症や負傷の危険因子を含む 200 以上の疾患の
 直接的な原因でもある


【推奨する内容】

●心理教育を行い、アルコール使用のレベル / パターンが健康を害していることを強調する

●アルコールを完全に中断するか、無害なレベルで消費すること(無害なレベルが存在する場合)をアドバイスする

●アルコール依存症の場合には離脱症状の治療や再発を防ぐために薬物療法を行う

●利用可能な場合は、心理社会的介入、例えば認知行動療法、動機付け強化療法、随伴性マネジメント療法、家族カウンセリングまたはセラピー、問題解決カウンセリングまたはセラピーや自助グループ





心身の健康管理


●体重の管理:Weight management


・過体重と肥満は特に直接的なリスク要因として高コ
 レステロールや高血圧などの心血管病の危険因子

 2 型糖尿病、癌、早期の死亡、心血管病などの多く
 の医学的合併症と密接な関連がある


・中年期の肥満(ただし過体重ではない)が認知症の
 リスクを高めることが示された


【推奨する内容】

●バランスの取れた食事を摂ることにより、体重を減らすよう過体重者に助言

●食事中の炭水化物の供給源として、低グリセミック指数の食品(まめ、レンズ豆、オート麦および無糖の果物)
を優先するよう助言

●座位行動を減らし、身体能力に適した定期的な身体活動を毎日実践するよう推奨(ウォーキングなど)





●高血圧の管理:Management of hypertension


・高血圧と認知機能低下、認知症の発症との間に強い
 関連がある


【推奨する内容】

●高血圧は、健康的な食事をとり、健康的な体重を維持し、十分な量の身体活動を行うなどのライフスタイルによって予防できる

●降圧薬治療は認知症や AD 発症に予防的に作用





●糖尿病の管理:Management of diabetes


・高齢期の糖尿病は認知症リスクの上昇と関連
 
 腎症(腎臓障害)、網膜症(眼障害)、聴覚
 障害、心血管疾患のような糖尿病に伴う合併
 症はすべて、認知症リスクを上昇させる


【推奨する内容】

●1 型糖尿病:
-毎日のインスリン注射(レベル 1)

●2 型糖尿病:
– 食事の改善、健康体重の維持、定期的な身体活動を行っても目標血糖値に達しない場合は、2 型糖尿病に対する経口血糖降下薬(レベル 1)
-過体重の患者(レベル 1)および過体重でない患者(レベル 4)にはまずメトホルミンを投与
-目標血糖値に達しない場合、メトホルミンに他のクラスの血糖降下薬を追加(レベル 3)





●脂質異常症の管理:Management of dyslipidaemia


・血清コレステロールの上昇は、修正可能な心血管病
 の危険因子の一つである

 血清コレステロール高値とアルツハイマー病および
 認知症の発症との密接な関係が指摘されている


・脂質異常症を管理することで認知症発症および認知
 機能低下のリスクが低減する


【推奨する内容】

●体重減少や食事中の飽和脂肪酸を減らすこと(すなわち動物由来の食物消費量を減らすこと)は、最も一般的で効果的なライフスタイル介入の推奨事項である

●脂質異常症はスタチンで薬理学的に制御・管理され、治療法の第一選択として薬剤が選択される事が多い





●うつ病への対応:Management of depression


・うつ病の存在は認知症のリスクをほぼ 2 倍にする


【推奨する内容】

●心理教育(適宜、患者本人およびその家族に対して)

●現在の心理社会的なストレス因への対処

●社会的ネットワークの再活性化

●可能であれば、短時間の心理療法

●抗うつ薬治療





●難聴の管理:MANAGEMENT OF HEARING LOSS


・聴力の低下は、個人のコミュニケーション能力に影
 響を与えるため、欲求不満、孤立感、孤独感を感じ
 ることがある


・難聴は、認知機能低下または認知症のリスク増加と
 も関連している
 
 難聴があると認知症のリスクが約 2 倍になることが
 示された


【推奨する内容】

●難聴がある高齢者を適時発見し治療するために、スクリーニングを行い難聴の高齢者に補聴器を提供する必要がある





その他の活動



●認知的介入:Cognitive interventions


・認知活動の増加が認知予備能を刺激し(もしくは増
 加させ)、急速な認知機能低下をやわらげる効果を
 有する

・認知活動レベルが高い者は低い者と比較し、軽度認
 知障害またはアルツハイマー病診断のリスクが有意
 に低下する可能性が示されている


【推奨する内容】

●認知活動の増加が認知予備能を刺激し(もしくは増加させ)、急速な認知機能低下をやわらげる効果を有する

●認知活動レベルが高い者は低い者と比較し、軽度認知障害またはアルツハイマー病診断のリスクが有意に低下する

●認知刺激とは、「認知機能および社会機能の改善を目的とした様々な活動への参加」のことを指す

●認知トレーニングとは、「特定の認知機能を高めるために定められた個々の標準化された課題を指針に沿って実践すること」を指す






●社会活動:Social activity




・社会参加が少ないこと、社会交流が少ないこと、
 孤独であることなどは認知症の発症率を高める

・社会的関わりは人の一生における幸福の重要な指標
 となっている

【推奨する内容】

●社会参加と社会的な支援は健康と幸福とに強く結びついていて、社会的な関わりに組み込まれることは一生を通じて支援されるべき







英語版・日本語版のガイドライン



こちらは今回の記事の内容となった「WHOガイドライン」の本編です↓


英語版とそれの翻訳版の2種類あります









おわりに


今回は『認知機能低下および認知症のリスク低減』WHOのガイドラインをみていきました


その中で


「12のテーマ」でのリスク因子と推奨している具体的な対応方法をまとめました




健康な高齢者や軽度認知症の人が実行することで
認知機能低下や認知症のリスクを減らすことにつながります




高齢者に関わる専門職やご家族の方にこれらについて
紹介することで少しでも「認知症予防」につながる
一助となればと思います



ドングリマツリでは認知症予防に関しての予防の為の


ブログ記事での情報の発信や「認知的介入」として
動画・問題用紙・ブログでのクイズ方式で”脳トレ”
を発信しています



こちらは不定期ながら少しずつ更新しておりますので
ぜひ活用して頂ければと思います






また、認知症に関することで何かお困りごとや質問
したいこと等がありましたら「お問い合わせ」の
フォームからメールをしていただければと思います



我々、作業療法士の立場として皆さまに対してアド
バイスでできることがありましたら相談にものらせ
ていただければと思います




今回もここまで長々と読んで下さり本当にありがとう
ございました




WHOガイドラインについては、英語版を翻訳したものは
非常に読みやすいです


さらに深く知りたい方はダウンロードをして
是非読んでみてください




【参考・引用文献】

●RISK REDUCTION OF COGNITIVE DECLINE AND DEMENTIA WHO GUIDELINES.2019年
●認知機能低下および認知症のリスク低減 WHOガイドライン.2019年
●WHO(世界保健機関)が推奨する12の対策.相談e-65.net