【本のレビュー】あなたは認知症世界の旅人〜『認知症世界の歩き方』(筧 裕介著)〜











この本ができるまでの経緯



まず最初に著者の紹介です

この方のプロフィールは…

2008年に、阪神・淡路大震災での避難生活の経験を今後に活かすためのプロジェクト「issue+design」から生まれた「できますゼッケン」が、2011年の東日本大震災の避難所でボランティアの人々に活用されている。
代表プロジェクトに東日本大震災支援の「できますゼッケン」、子育て支援の「日本の母子手帳を変えよう」他。



ということで

これまでさまざまな社会的課題について


「デザイン」を通して取り組まれてきた方です




そして今回のこの本を書いた経緯としては

「認知症の課題解決は、デザイナーの仕事だ」

認知症のあるかたが生活に困難を抱えている原因の大半がデザインにあるのです。「認知症のある方が暮らしやすい社会を実現するために、デザインはなにが可能か」そんな問いへの答えを模索し、たどり着いた1つの結論が、この『認知症世界の歩き方』です。



これを書くにあたり

なんと!


認知症の当事者の約100名の人の



実際にインタビューを重ねてまとめられました





あなたは認知症世界を旅する旅人






冒頭より


あなたは認知症世界を旅する旅人

この物語に登場するのは、架空の主人公でも、知らないだれかでもなく、

「少し先の未来のあなた」や、「あなたの大切な家族」です。

認知症世界の旅、はじまり、はじまり。


というところからこの本は始まります




認知症世界とは

ミステリーバス、ホワイトアウト渓谷、

アルキタイヒルズ、創作ダイニングやばい亭

顔無し族の村、サッカク砂漠

七変化温泉、パレイドリアの森

トキシラズ宮殿、服ノ袖トンネル

二次元銀座商店街、カクテルバーDANBO、カイケイの壁



名称だけ聞いても

「?」マークが頭の上にいくつも浮かんできそうな場所ですよね


その場所ってどんなところなんだろう…


詳しくは本編にそれぞれの体験について分かりやすく描かれています




本編を通して思わず


「こんな摩訶不思議な体験を認知症の人は体験しているなんて…」



と、これまでの認知症の人の不思議な行動が


より理解できると思いました




認知症の診断基準(DSM-5)では

複雑性注意障害、遂行機能、学習および記憶、言語、運動–知覚、社会的認知の1つ以上の認知領域において有意な低下がある




と述べられております





それぞれの症状について理解できてはいましたが


それを実生活の困難さと


うまく結びつけることが難しかったような気がします





それがこれら13ヶ所の場所を


実際に体験していくことで



実生活の生きづらさについて


体感することができる内容となっております





非当事者の方は

これまで認知症の当事者の思考や言動について

外側から想像するしかありませんでしたが

この本を通してこの世界を体験することで

より理解を深めることができると思いました




当事者の方は

自分の体験している世界について

この本が代弁してくれているので

周囲の人たちに自分の想いを伝えやすくなったり

それ以外の当事者の人がどんな世界を体験しているのかを

知る手段にもなると思いました




この本の1章では

「認知症世界の旅行記」


そして

第2章では

「旅のガイド」となっており


認知症とともに生きるための知恵を学ぶことができます







これまでも

「認知症」関連の書籍の中では

認知症当事者による体験談が語られたものも多くあります



今回のこの本も

当事者の体験談から生まれた内容となっておりますが


その数なんと約100名の人への

インタビューであること

わかりやすいデザインかつ

言葉もわかりやすい言葉
で書かれていて

とても読みやすくて「認知症」について


興味をもつためのきっかけとなる本だと思います





認知症となる人の人口における割合について…

60歳代後半で認知症になるのは、その年代全体の約3%程度です。5歳長生きすると認知症になる確率はほぼ倍増します。90歳代前半では2人に1人が認知症となるのです。95歳を超えると8割近い人が認知症になっています。



今後超高齢化社会が進行していく日本の中で


誰しもが加齢と共に「認知症」になり得る可能性をもっています



また身近な家族がなり得る可能性ももっています


その中で「認知症の人の世界」を

理解できる人が増えることで

認知症=不幸 という考え方を持つ人を減らし

幸せな未来を想像することができる


そんな一冊だと思いました





『デザイン』と暮らし




認知症とは…


脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の器質的な変化により日常生活に支障が生じる程度にまで

記憶機能及びその他の認知機能が低下した状態

2012年4月施行 改正介護保険法 第5条2「認知症の定義」より



「認知機能」がうまく機能しないために

「やりたい活動」をうまく行えなくなり

日常生活が困難になります




その中で

活動をうまく行えるようにするための対処方法として

「環境」を整えることはとても有効な手段です




環境を分かりやすくシンプルに調整することで

本人のできる活動の幅を広げることができると思います






著者は後書きで

「デザインとは、人間とモノ・サービス・環境・情報との幸せな関係を創る行為」

と述べています




この本を通して

「認知症」についての


物の見え方や捉え方を知ることで

より身近な問題として

感じられる内容となっております








作品情報




タイトル:認知症世界の歩き方 〜認知症のある人の頭の中をのぞいてみたら?〜
著者:筧裕介氏(issue +design)
監修:認知症未来共創ハブ他
発行社:ライツ社
発行日:2021年9月21日
ページ数:264P




あお

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