【予防Q&A】予防にはどんな運動が良い?
「運動は健康に良い。そして、健康に良いならばきっと認知症予防にも有効だろう。」
運動の重要性は皆さん理解されている事と思います。
1年前の記事ではありますが、国としても高齢者の通いの場として注目していて増やす方向で動いているようです。
【介護予防でスポーツジムと連携 厚労省、枠組み検討 “通いの場”の強化目指す】
引用元: https://headlines.joint-kaigo.com/ 2018.10.25
市町村などが地域で開催している高齢者の“通いの場”を強化するため、厚生労働省は民間のスポーツジムやスポーツインストラクターなどの協力が得られる枠組みを検討していく。介護予防で具体的な成果をあげていける体制を作りたい考え。最重要課題の1つと位置づける健康寿命の延伸につなげる狙いがある。
ここ数年24H型のジムも増えてきているけど、女性向けの〇ーブスなどもよく見かけるよね
そうそう。で、区のトレーニング室でも、高齢者向けのクラスに沢山の方が参加していたし
個別ではトレッドミル(自動的に床面が動いて歩いたり走る機械)やエルゴメーター(自転車)にも多い印象だったよ
厚労省のホームページでも下の様な施設について大臣認定を認めております。
厚生労働省では、国民の健康づくりを推進する上で適切な内容の施設を認定しその普及を図るため「健康増進施設認定規程」を策定し、運動型健康増進施設、温泉利用型健康増進施設、温泉利用プログラム型健康増進施設の3類型の施設について、大臣認定を行っています。
運動型健康増進施設:主な設備 トレーニングジム、運動フロア、プールの全部又は一部
引用元: https://www.mhlw.go.jp/
これからも、益々こういった施設は「通いの場」として活用されていきそうですね。
では今回は、「認知症予防」と「運動」について記事に書かせていただきます。
【目次】
運動による認知機能への影響
●認知症の危険因子として、糖尿病、高血圧、肥満、喫煙、うつなどの生活習慣にかかわる要因が報告されており、なかでも身体活動の不足がアルツハイマー病の発症に強く関連するとされている。つまり、身体活動を向上させて活動的なライフスタイルを確立することは、認知症の予防のために重要な要因であり、定期的な運動習慣を有する高齢者では、将来の認知症発症のリスクが軽減されることが示されている。
●さらに、積極的な運動の実施によって認知症の発症予防や遅延が期待されている。
引用元: MEDICAL REHABILITATION NO.241
現段階では、積極的な発症の予防や遅延の効果を明らかにするまでには至ってはいませんが、脳機能の改善や脳の器質変化への効果は確認されていて有効だと期待されていますよ
また、運動は多方面で認知機能へ良い影響を与えている。
生物学的には、脳に良い刺激が増えて好影響を与えているんだね
行動学的には、疲労が良い休息を与えてくれて
リズムも整うし、身体機能も活動量も増えるね
社会心理学的には、気持ちがスッキリしたり自信につながったり
他者との交流も増えて、社会性も維持されるよね
そう考えると、運動の及ぼす影響は
計り知れないね
運動の実践の基本的な内容
認知機能の改善・維持に対して効果的な運動介入としては、上の表の様な要素を組み合わせた構成にする必要があるようですね
そして、認知課題を負荷しながら(二重課題・多重課題)の有酸素運動等によって、より効率的に脳の活性化を図ることができるようですね
高齢者の特徴について
●高齢者の特性は、二次課題である認知課題の成績に顕著に表れる場合が多い。
●高齢者は、特に視覚情報が利用できない条件において、反応時間が顕著に遅れることがわかった。
引用元:姿勢と歩行 協調からひも解く
高齢者は、足裏からの感覚や前庭感覚(三半規管)からの情報に比べて、目からの情報が一番でそれを元に立ってでのバランスを保持している様ですね
また、歩行中の質問に対して立ち止まって回答するかどうかの実験があったようですが、その結果質問に対して「立ち止まって回答した人」は転ぶ可能性がとても高かったようですね
高齢者の特徴としては、個人差はありますが一般的には立ってバランスをとるだけで頑張っている場合があり、そのために認知課題(二重課題・多重課題)に対しては若年者~壮年者に比べて負荷が高くなりやすいようです。
この事については、現場でもよく経験します。高齢者の方で歩いている時に集中して下の床を眺めている人は多いです。
また、途中話しかけた時に考える時などに一旦立ち止まる方は立ってでのバランスが苦手であったりします。
コグニサイズについて
ここまでの内容では、高齢者は認知課題が苦手であるということ、そして認知症予防の運動としてはその認知課題を負荷をかけながらの有酸素運動が有効であるという事を書かせていただきました。
そこで、具体的な運動内容ですが、「コグニサイズ」です。
これは、cognition(=認知)とexercise(=運動)を掛け合わせた造語でして、
国立長寿医療研究センターが開発されたものです
コグニサイズとは国立長寿医療研究センターが開発した運動と認知課題(計算、しりとりなど)を組み合わせた、認知症予防を目的とした取り組みの総称を表した造語です。英語のcognition (認知) とexercise (運動) を組み合わせてcognicise(コグニサイズ)と言います。Cognitionは脳に認知的な負荷がかかるような各種の認知課題が該当し、Exerciseは各種の運動課題が該当します。運動の種類によってコグニステップ、コグニダンス、コグニウォーキング、コグニバイクなど、多様な類似語があります。コグニサイズは、これらを含んだ総称としています。
引用元: 認知症予防運動プログラム「コグニサイズ」
1. 運動は全身を使った中強度程度の負荷(軽く息がはずむ程度)がかかるものであり、脈拍数が上昇する(身体負荷のかかる運動)
2. 運動と同時に実施する認知課題によって、運動の方法や認知課題自体をたまに間違えてしまう程度の負荷がかかっている(難易度の高い認知課題)
運動課題と認知課題を同時に行う活動です。具体的な内容については、専門の著書も複数出版されておりますし、ネット検索で「コグニサイズ」で探すと 国立長寿医療研究センターさん や 健康長寿ネットさん が見つかってそこでコグニサイズに関する情報が詰まった冊子も無料でダウンロードできますよ
私もよく現場で活用させていただいています
ただ運動したり歩いたりするよりも皆さん楽しんで
行ってくださっています
運動内容としては、 ステップ運動や歩行をしながら平地・段差・はしごなど環境を変える。
認知課題としては、〇の倍数・計算・しりとり・連想ゲームなどを課題レベルを変えながら行う。
この両者を組み合わせてコグニサイズとして個別でも集団でも人数は問わずに取り組むことができます。
そのため、自宅で一人でやったりご家族と行うでもいいですし、仲間同士の集まりの場で行うのもいいですし、通いの場でのレクリエーション活動の一環として使用するのも良いのではないでしょうか。
以前の職場では25人程度の集団活動で、コグニラダー(ふまねっと)を導入していましたがとても好評でした。
終わりに
今回の記事では、「予防にはどんな運動が良い?」について書かせていただきました。
具体的な運動の内容については、国立長寿医療研究センターさんが開発されている「コグニサイズ」が一助となるのではないかと思いました。具体的な内容としては、著書やネットで確認していただければと思います。本格的に指導される場合には資格もあり、研修制度もあるようです。
運動を継続させることは好きではない方にとっては中々難しいかと思います。
もし、1人で行われている方でそのような方がいらっしゃいましたら、近所の通いの場やフィットネスジムも活用されると交流が広がり続け安いかもしれません。
最後に、身体機能維持に必要な歩行量についての目安を下の表で記載させていただいて終わりにさせていただきます。
ここまで読んで下さりありがとうございましたm(__)m
【参考・引用文献】
●認知症早期診断・発症進行予防とリハビリテーション.MEDICAL REHABILITATION NO.241. 2019.10
●姿勢と歩行 協調からひも解く
●リハビリテーション効果を最大限に引き出すコツ
●介護予防でスポーツジムと連携 厚労省、枠組み検討 “通いの場”の強化目指す https://headlines.joint-kaigo.com/
●認知症予防運動プログラム「コグニサイズ」.長寿医療研究センター https://www.ncgg.go.jp/
●コグニサイズ-認知症予防へ向けた運動-.健康長寿医療ネット https://www.tyojyu.or.jp/
●健康増進施設認定制度.厚労省 https://www.mhlw.go.jp/